hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

鏡山



草木が霜で薄白い朝、鏡山の麓を歩いた
霜柱を踏む足裏が心地よい
沢沿いの池は凪ぎ
薄氷が張る池面を瑠璃色の光が切り裂いた
高速の光は枯れた池畔の葦の中に消えていった
宝石のようなカワセミの滑空は
落葉の林と枯れ葦の色の中
異次元から現れたかのようだった


新羅からの渡来人の鏡に由来を持つ山
かつては山中に立派な寺院が建ち
麓には源義経元服の地
食せる土の産地でもあったらしい
歴史と奇異な土壌に想いを馳せ
山頂の涼み石から遠く琵琶湖を眺めた


尾根を渡り谷を遡る
裏山とも言える身近な山なれど
そこにある出会いは豊かだ
杣道沿いのリンドウにササユリ
湿地は黄花菖蒲
小さな峠を越えると
一枚岩を削る沢の連滝と甌穴
計算されたかのような岩の庭園が現れる


氷の溶けた池には鴨が数羽
水鳥がたてる波紋が鏡映しの虚像を揺らす
やがて池面の波紋は虚と実のあわいに消えていった