hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

甲山(かぶとやま)



切り開かれた山頂の切り株に腰掛け
青い細帯の琵琶湖と比叡山を眺めている
暖かな陽は地面を照らし足元から我が身を温め
私は眠気と戦いながら上着を一枚脱いだ


冬は去ってはいない
ただ、見渡す世界は霞で覆われ
つかぬ間の陽気は里山の季節と時を惑わす
私はいつの間にかまどろみ、空想の中にいた


かつて秋晴れのこの山に旗振りに登った人たちがいた
実りの収穫を終え期待に膨らんだ胸を膨らませ勇んで登ったに違いない
山頂からの尾根の先端で力一杯旗を振る男
堂島からの米相場を間違えぬよう気を張った後ろ姿
振り向いた男たちの力強い笑顔を見た時まどろみは解けた


霞の遠く比良の稜線は冠雪で白い
稜線から落ちる谷の白線は山の輪郭を際立たせ
さながら高山の様相を呈している
空想を離れた私はそれが比良の蓬莱山だと認識するのに
しばしの時が必要だった