hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

妙光寺山


妙光寺山


谷を遡りびわ峠に出ると西風がそよと吹き
首筋の滲んだ汗を飛ばしてゆく
扇に広がるびわ湖の方面を望むと
薄光る湖面の上に薄墨の比良山が映し出されていた


古代峠の噴石によじ登り近江富士を仰げば
シンメトリーな三角は一段と明確だ
裾の流麗な曲線が気品良く優雅で
この地のシンボルであることを誇示している


風化が進む真砂のザレを滑らぬように尾根を進む
山頂に続く尖ったピークを二つ越えると鞍部にはぐれ大岩
攀じ登ってテラスに寝そべると青空は深く
ジェット機が一機、琵琶湖の上に白線を引いていた


山頂は四方に開け、とりわけ近江北方の眺望に優れる
北を望む突出した岩に座し、汗が乾くまで遠望に揺蕩った
視線の先を横切る一羽のカラスを追うと
小さくなる黒点の向こうに雲の白線が比良の奥空に消えていた


西の谷に一気に下れば石棺が一基
整った方石で設えられた墳の暗闇に供花が窺えた
時は千年余りが経つのだろうか
石棺の闇に時の移ろいが秘されているように感じた


出世不動明王の巨石を一回りしてびわ峠に戻ると
峠に吹く風は再び汗ばんだ肌を優しく撫でていった
気まぐれな山散歩に満足した私は峠を下った
さて、次はいつまた周歩しようか、と考えながら