hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

2022年8月のブログ記事

  • 綿菓子

    秋口の里山を歩く時の必携道具に木の枝がある。1メートル前後の長さでやや弓なりになっている方がよい。用途は蜘蛛の巣払いだ。 この時期の山道はまさにトラップだらけである。人通りの少ない道や朝一番の通行はこのトラップの餌食になりやすい。それらの高さは道の両側の草木の張り出し方によってまちまちではあるが、... 続きをみる

  • 茜空とシルエット

    空が破れる 昔のバンドの曲にそんなような歌詞があった 茜の空を背景に岩峰を眺める すると空が破れていた 破れの奥は漆黒 果てのない闇がある 歌では破けた空は青空 裂け目からは「あいつ」が降りてくるのだと この茜空の裂け目からは 何が降りてくるのだろう

  • 空の指紋

    乗鞍岳の山頂 空が近い 流れる雲の合間に深い青空 その一角で見つけた指紋 誰かが青空に触れたようだ

  • ファンファーレ

    聞こえてきませんか ファンファーレ 山の向こう側から賑やかに鳴り響いてくる 何が始まるのだろう 気持ちがはやり 足を速めて鞍部に急いだ

  • ひよこ岩

    近江、湖南アルプス金勝山は奇岩の宝庫 風雨に洗われた奇岩群は人間の所業によるところ大なり 始まりはおよそ1300年もの前 この辺り一帯から奈良の神殿や寺院建立のため材木が切り出された 以降も伐採が続けられ、明治時代にはほぼ禿山と化してしまった この地から琵琶湖に流れ下る川が天井川になったのは 裸山... 続きをみる

  • タンポポ

    だんご3兄弟なる歌が流行った もうかれこれ20年も前になるだろうか タンゴ調の曲だった 高原の一角にタンポポの群落があった たくさんの綿毛の球が光り輝いていた その中にこの3兄弟を発見 タンゴの曲は聞こえなかったけど 楽しげな兄弟だったなあ (そういえば、国民年金未納3兄弟というのもあった。どうで... 続きをみる

  • アサギマダラ

                        画像   ーウイキペディアより拝借  夏の白山、南竜山荘の玄関前でのこと。近くにいた父子の父親の方が目の前の草に飛来した蝶を見て誰に聞くともなしに「何て言う蝶だろ?」と言った。そばにいた僕はすかさず「アサギマダラ」と答えていた。するとその父親は「ああ、そうい... 続きをみる

  • 苔のある景観

    馬越峠の石畳 (上下2枚) 熊野古道の一部、伊勢路の苔 さぞ多くの旅人に踏まれてきたのだろうな 赤目四十八滝は苔の名所なり  (下4枚) 渓谷全体が苔に包まれる 鈴鹿、御池岳日本庭園付近 足の踏み場に躊躇いを覚える苔の台地 石川、白山神社の老木 木漏れ日がアートを作っていた 野面積みの匠、穴太衆の... 続きをみる

  • 苔いろいろ

    日本には1000種以上の苔があるらしい 僕は苔男ではないが (最近「苔女」なる女性苔マニアが多いそうな)  山でふと目にした苔を写真に収めることがある ふわふわの質感が視覚を喜ばせる マニアは「モフモフ」と表現する じっくりと見ると苔はミニチュアの樹木 僕たちが杉やら檜を見上げるように 蟻などの微... 続きをみる

  • 苔の寺

    幹を抱き抱えるに3人でもおぼつかない杉の大木 老木の皺を隠すように鮮緑の化粧苔 湿り気を帯び蝋の皮膜を纏ったかのような樹皮は その艶に反して相応の年齢を感じさせる ここは苔の世界 老木のみならず 石垣も灯籠も石仏も石畳も 瑞々しい苔を纏っている 曹洞宗大本山永平寺が苔の名所だとは 訪れた後に知った... 続きをみる

  • 旗振り山

    岩戸山の先端に立つ。南方に近江平野のシンボル三上山が見え、その少し右手に旗振り山がある。 北を望むと琵琶湖の手前に荒神山その右手に佐和山が見える。 野洲の旗振り山、近江八幡の岩戸山、彦根の荒神山に佐和山、この四山、米相場の伝達のための旗振り山である。 電信がなかった江戸末期から明治初期、大阪の堂島... 続きをみる

  • オオセンチコガネ

    山道で春から秋にかけて見かける2センチ前後の丸っこい甲虫。体色は複数あり瑠璃色の個体もあるが緑やエンジ色のものもある。 いづれも光沢の良いメタリックな甲冑を身にまとい、陽の光を浴びると宝石さながらだ。 こうした金属光沢の色彩は構造色と呼ばれていて、ネット情報によると「光の波長あるいはそれ以下の微細... 続きをみる

  • チングルマ

    夏の高山の代表的な花であるチングルマ 岩場の隅に数輪咲くもよし 花畑に群生するもよし 小さな白い花は実に可愛いらしい この植物 成長が遅遅な超低木だそう 木に咲く花である 花を終えると赤みを帯びた綿毛のような形状になる ネムノキの花のようでもあり イソギンチャクのようでもあり あの可憐な花からは想... 続きをみる

  • はじける包葉

    お椀のような包葉が弾け膨らむ 嬉しくてたまらないようだ そんな喜びの素が包の中に きっとあるのだろう 朝日の中で 喜び合う賑やかな声が 聞こえてくる

  • 外側の色

    光は7色からなるそうな ただ、僕には5色しか見えない 光は電磁波の一種 人の目は可視電磁波の波長ごとに色が違って見える 分離された光が7色の基 赤、橙、黄、黄緑、緑、青、紫 赤より長い波長は赤外線 紫より短い波長は紫外線 いずれも人間にはまず見えない 僕には緑も紫も怪しい 山頂で出会った逆弧の虹 ... 続きをみる

  • 巌門

    針山の入り口には仁王のような 2対のいかつい巌門が待っていた この前衛の狭き門、検門でもある 奥の主峰を目指す者の資格を見定める さて、私はこの巌門の前に立つ 心なしか両岩がギュッと寄ったかに見えた すかさず一歩前に踏み出す すると寄せは止まった 躊躇わずその後の歩を進めた 今度は奥の主峰がグイッ... 続きをみる

  • 影絵

    早朝の山頂で影絵を見た 東の空いっぱいがスクリーン 槍穂高の上空を龍が飛んでいく 何の物語か分からないけど 昔話を想起させる ふた昔前 山の写真はポジフィルムで撮っていた 現像してもらったラッシュフィルムは スライドプロジェクターで一枚一枚映写してマウントに綴じる 山行から帰った後の楽しみのひと時... 続きをみる

  • 要塞

    山肌を突き破る三角群 風雨や波の侵食によるもので硬い部分だけが残った結果 とは、よくあるもっともらしい地形の説明 整った三角の配置は 海からの侵入を防ぐ要塞のようであり 古代に人々が設けた魔除けのようでもある ただ、何となく 物悲しさを感じるのは私だけだろうか 波打ち際を見つめ続けるあれらに 生命... 続きをみる

  • 空海

    空海の青が見事だ 高波長の青光は 大気の中で散乱し 他色をおさえ 空を青のスクリーンに作る 水の青は本質的である もともと青を呈する 他色は散乱吸収され 青だけが海を色づける そして1400万年前 地球の憤怒は 紀伊の半島に巨大すり鉢を作り 奇異な岩杭で界橋を残した 途絶えた橋の先の異界は 今では... 続きをみる

  • 37年前の今日

    1985年8月12日、僕は穂高の涸沢のテントにいた。不気味なほど紫色に暮れなずむ常念岳方面の西空に慄き、日暮れ前にランタンを灯した。 テントの中でラジオを聴いているとジャンボ旅客機が長野県あたりの山中で消息を絶ったと報じていた。この近くだろうかと、まだその辺りの地理に疎いながらも、もしやと近隣の山... 続きをみる

  • 立岩

    砂浜を形成するありふれた河口を塞ぐ岩塊 柔い曲線の砂浜に硬質の柱状節理 ミスマッチな硬軟混合な質感は奇妙な世界を作る 時空を突き破って立つ岩は 場違いのようでもありながらも 怯まない 迷子のようでもありながら 恐れない 日本海の荒波に 風雪に 決して動じることなく 時空の裂け場の綻びを防ぎ続けている

  • 蚕食

    人の横顔に見える というのが多くの人の見方だろう 妄想癖のある私の見方は異なる 闇に動きを見るからだ 鼻頭に眩い太陽は間もなく暗闇に呑まれるだろう 闇の動きは遅遅のようで意外と速い 桑の葉がいつの間にか食べられているように 世界から青空を取り除くのにそう時間はかからない 闇の正体は何か もちろん蚕... 続きをみる

  • 口蓋垂

    俗称、喉ちんこ 頭に喉が付くからか 若い女性でも抵抗なくこの名称で発する この奇妙に垂れた器官は 口腔と鼻腔との間にあり 食物が鼻に入らぬための弁である また、微妙な震えは発声に影響する 哺乳類では人間だけにあるものらしい さすれば 目的はわからねど 大海原に大声をあげる これも人間のものというこ... 続きをみる

  • 木漏れ日の演出

    木漏れ日の照明に輝くウラジロ 熱帯林かと錯覚をするかのような光景が林床のあちこちに点在する 檜の植林帯はちょっとしたスポットライト浴びるライブ会場客席さながら うっすらと暗い林の中の光の演出に迎えられ しばらくシダの海原を彷徨うことにしてみた

  • 立山の鏡

    自分の姿を鏡で写したがる山は結構多い 身体の適当なところに池や湖、湿地の池塘などを配置し 天球を通過する光源を利用して我が身を映す 正面顔は目の前のこの池で 横顔は朝の斜光が当たるあの池で 立ち姿は台地の下の池塘で 大きく威厳ある山であるほど鏡の数は多く 自身のさまざまな表情を見たがるようだ 加え... 続きをみる

  • 夜明けの月

    剱岳と立山の頭は朝陽に赤い その向こうに薄れゆく夜の光源 背から真の光源が上がり やがてアレは白い影に変わり、そして沈む 赤い山頂と照る月の共演は束の間 この自然の設定との出会いは幸運だ それにしてもこの月 誰かが切り抜いたかのような 見事に丸い空白 宇宙船か何かが出入りする窓のようにも見えてくる... 続きをみる

  • 霧が這う 明けつつある夜から帰るため 霧が洗う 汚れた森の浄化のため 霧が呑む もう一つの世界を作るため 霧は使者 現界に伝令を届けにやってくる 霧は迷い者 時空の狭間で立ち往生 霧は旅人 夜ふけに訪れ朝に去る 早朝の杉の森 竜の如き霧は樹上の窪みを蛇行し その姿をゆっくりと消して去った

  • 回想 初めての槍ヶ岳

    富山県有峰の折立から入り、槍の山頂を踏み上高地に下った。有峰口からはヒッチハイクしてトラックに有峰湖まで運んでもらった。 太郎平の小屋には僕を含めて4人しか宿泊者はいなかった。夕食後、炬燵に座る3人の登山者の中にお邪魔した。 この日はどうしたことか普段は人見知りの自分がトラックを止め、見ず知らずの... 続きをみる

  • 回想 西穂高縦走

     この困難で危険なルートを縦走してみようと考えたのはある年配の女性の一言がきっかけであった。真夏の暑い盛りに家族旅行で西穂高岳独標に登った。 まだ小学校低学年だった次男は丸山でストライキを決行した。なだめて励ます親に向かって言った言葉は今でも忘れない。 「頂上行っても景色があるだけやろ!」  これ... 続きをみる

  • 粘土のオブジェ

    土粘土での創作の手伝いをやったことがある ある人はちぎりとって丸めた土を叩いては重ね叩いては重ね おかしなオブジェを作った ちょうどこんな具合だ ただ、これは叩かれたものではない 花崗岩の塊を叩き重ねてもこうはならない 雨雪の巧妙な仕業である と言ってもその工程を説明せよと言われてもできない 粘土... 続きをみる

  • イワナ

     

初めて野生のイワナを見たのは上高地。河童橋から徳沢に向かう梓川で20センチ以上もあろうかというものがたくさん泳いでいるのを林道から見下ろした流れの中に見たことがある。三十年以上前のことだ。  初めてイワナを食べたのも上高地だった。富山の折立より黒部五郎岳、西鎌尾根を縦走し槍ヶ岳から下って横尾... 続きをみる

  • 葉束

    雪溶けて 緑葉束に 花一輪 花束のようなコバイケイソウの株に添い咲くショウジョウバカマ この一輪がコバイケイソウを花束以上にしている 残雪の山を撮っていた足元に 初夏の喜びが生えていた