hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

2022年3月のブログ記事

  • 孤岩

       吹きっさらしの高原で    可愛らしい石を見つけた    なんとなく生き物を    そして人間を感じる    そんな寂しい石が    ポツンところがっていた

  • 虚像

    あれは 今  ほんとうに あそこにあるのだろうか 影のようなあれと 暗闇を照らすあれは 同じもの? 感じることは出来ようか いやできまい あれが引く力を あれはいつも同じ面 信じられるだろうか? 出来すぎた同期 27・32日 誰かが貼り付けたのだ  天球に 裏面に潜む 狂気を封印するために

  • 幸運の珍変木

    霊峰山頂から尾根筋を少し下ると 雪面から案内板が生えていた 「ブナの珍変木」 「唐変木」はもはや死語だが こんなところで新語が生まれていた いかにも行為をそそる凍れたアーチ 風雪の仕業であるらしい くぐれば幸せを呼ぶと言う すでに何人もが実行したようだ 当然ながら僕も四つ這いで こうう「ん」のフォ... 続きをみる

  • 山のサンゴ

    「ねえ、じいじ  ここにはニモやドリーはいなかったの?」 「ここにはいないよ、水の中じゃないんだ これは高い山の上にあるお花畑なんだ 息も凍るくらい寒い冬になると 畑の葉っぱたちはサンゴになっちゃうんだ」 「へえ~ 山にもサンゴができるんだ! ねえ、今度見に連れてって」 「そうだな おまえがこの話... 続きをみる

  • 浅間山

    早朝の陽光に生と死が並んでいる 「死」の訪れは 六万五千年も前の白亜の頃 三億五千年の繁栄は凍て 時の流れを示準する 「生」の誕生は 十三万年を遡る中新世 やさしくたおやかなドームは 幾多の生を奪った過去をもつ 遥かな尺度で眺めれば いずれも瞬時の出来事 死と生が静かで穏やかに並んでいる

  • 空目

    表皮の細胞は窪みの構造を作り 脳は頭蓋の外に出先を作る 2つの動きが結びついた結果が目だ Pax6にコードされた巧妙な進化 レンズを通った光子は網膜の視細胞が捕え 波長は電気信号に変換される 軸索を経て送られた信号は 脳の視覚野で画像として組み立て直される 「見え」の知覚とはこういうことだ しかし... 続きをみる

  • 黄金の瞬間

    荘厳な光源が頭を出す直前 世界は黄金になる 決して特別ではないありふれた朝 その時 ある者は目覚め ねぐらを出る準備をするだろう ある者は狩りを止め ねぐらに帰るだろう そして、我々は 黄金の空に手を合わし 涙する 1400万年もの太古から 欠かさず合掌し続ける かの岩礁と共に

  • 僕は中学生の時 冬の寒い校舎の外で1時間も立たされたことがある 始業時間に教室に戻っていなかったというだけで 3人か4人一列に並んでいたな そう、ちょうどこんな具合に バカを抜かすな 校舎の外とここを一緒にするんじゃない それに、俺たちは一晩以上だ 見てみろこの身体がその証だ いや失礼 ところで、... 続きをみる

  • 地球の色

    こんな日に山に登れる幸せを噛みしめる マイナス15度、凛とした空気の中 遠くから乾いた破裂音 極寒に幹が耐えられなかったのだろう 残酷な現象だが 林間を抜ける音は耳と皮膚に心地よい 樹上を見上げてみる 木は見上げる姿が良いと言うが 納得いく生命性と美がある 出来過ぎをも感じさせる光景は 誰かが仕組... 続きをみる

  • 立ち行

    強風と正面きって対するには 肩幅より少し広く踏ん張り 腰を落としやや前傾姿勢を保つ これが重要な構えだ なに? ピッケルは持たないのかって この姿を見てもそんな物が必要だと思うのか お前も一度道具に頼らず 己が身だけで受け止めてみると良い 尾根を越える風を 樹木の繁茂が少ないこの尾根では 北西から... 続きをみる

  • 失色

    色の知覚には網膜にある3種類の錐体細胞と 側頭葉にあるV4領域の機能が必要だ どちらかが不全だと 知覚できる世界は白黒のものとなる 溶岩台地に吹き付ける風は容赦がない 列島に寒気が南下し 低気圧が北日本を通過する 北アルプスに多量に雪を落とした後の 身を切る寒風が諏訪を吹き抜ける この日、黒雲が空... 続きをみる

  • モノリス

    神の居どころに由来するこの地の巨石 広大な大地に作られた環状の神座「カルデラ」 1400万年も前の建造にもかかわらず その座の背もたれは時の流れに抗い この荘厳なる形を保ち続ける それは 今もなお座を守り続ける犬の 熱き忠誠心の賜物なのであろう

  • お仕置き

    ねじりの入った体の先に 天空のどこかを見やる悲しげな顔 苦痛と懇願 背に負わされた幾重の重しは 罪の数によるものか? 俺は素知らぬ顔をして 横を通り過ぎようとした だが、そいつは呼び止めたんだ なに? 俺に頼みごとがあるだって? いやいや おおよその見当がつくだけに それは聞くことはできない 誰の... 続きをみる

  • ゆるぎ石

    揺るぎない意志とそれを価値あるものとする社会 そうした価値を幻想だと言ったら言い過ぎだろうか 人間界では揺るがない意志とその持ち主が 価値高く賞賛され尊ばれがちだ しかし、僕は思う 揺るぎないことがどれほどのものか、と 強固な意志の所持者であっても 自身を構成する素は 揺らぎで成り立っているのだか... 続きをみる

  • 跨り岩

    思わず乗って見たくなる心地よい曲面 ズリッ、ズリッ、ズリッと 股間の宝物に気をつけながら 先端を目指して跨り移動 鞍部に臀部を落ち着けて サイの角の先に視界を広げれば さて、何が見えるだろうか 穏やかで、長閑で、のほほんとした そんな世界が見えるに違いない