hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

2022年7月のブログ記事

  • 滑落

    3000メートルの山頂はあいにくのガスであった 岩陰でガスが晴れるのを待つこと30分 ガスは晴れることはなく風は強まるばかり あきらめて下山することにした 岩稜帯を下っていると 吹き付ける風はその強さを急激に増した 大きな岩を巻くように風上側に回り込んだ時 猛烈な風圧に吹き飛ばされそうになった 僕... 続きをみる

  • 雲海

    木曽駒あたりから甲斐駒を見る 伊那谷は雲海の下 雲海は大河 蠢くような雲襞は 生き物のように揺蕩い流れる この下にほんとに街や人はあるのだろうか 天竜が深くえぐる谷筋は 妖気漂う雲の大河が流れる道でもあった

  • モルゲンロートとアーベンロート

             モルゲンロート アーベンロート ケッタイな呼び名 朝夕の赤焼けのことらしい なんの加減か晴れていてもさほど赤くならない日や 濃い赤の景観が拝めることもある しかし、いずれも時間は長く無い まだ赤くなるだろうと待つうちに薄れてしまうこともありがち 青は人間の好む色、安心安定の色 赤... 続きをみる

  • 笠へのプロムナード

    この山は実に端正だ その名の通り四方どこからも左右対称な「笠」型に見える 他の山と少し距離をもつのもそのフォルムを強調する独立性を生んでいる この山は直下の麓からぐいっと急登するのもよいが 回り道をして北陵を辿るのが良い 笠に向かう等高の散歩道が格別だ 南アルプスの北岳と間ノ岳の3000メートルの... 続きをみる

  • 給餌という行為

    もう10年以上前から近くにある山林内の自然公園を散歩している。山登りなどに行かない週末の午前の日課だ。 つまらない団地の中を足速に過ぎ林道に入り、林道の終点近くの小川の渡渉部まで約30分。山道に入る分岐の川には飛び石が敷かれ、その下流部は溜まりになっている。ここが散歩の一つ目の楽しみの場所。 僕が... 続きをみる

  • 琵琶湖の蓮

    2016年夏、琵琶湖の赤野井湾でとても悲しいことが起りました 群生していた蓮が全滅したのです 琵琶湖南部東岸に突き出た烏丸半島北側の湾は甲子園13個分の広大な浅瀬で 8月初旬にはほぼ湾全部を埋め尽くすほどに蓮が咲いていたのです それは荘厳で見応えのある景観でした 蓮の花も葉も実に美しい これほど澄... 続きをみる

  • 変態

    体を覆う皮膚がこわばり その内側ではプログラムの進行が加速する 意識が曖昧になってきた 覚醒と眠りの狭間で時間がなくなる どれくらい時が経っただろうか 再び意識を感じた時 からだの奥から突きあがる衝動を覚えた からだは素直に反応する 背中の硬くなった皮膚を押し破り するべきこととして抜け出した  ... 続きをみる

  • オオスカシバ

    我が家の縁台の鉢植えに 鶯色の小さなハチドリのようなものが飛来した あれか?と近くに行って確認 やはりオオスカシバだった 何度か目にして気になっていた蛾だ 何日かすると妻が鉢植えの一つのクチナシに芋虫がついていると言う 「どんなの?」 「小さかったのにもうこんなになってる」 と人差し指と親指の間を... 続きをみる

  • 尾瀬 ーヒツジグサー

    昨日は目にしなかったのに 今日は咲いていた 小ぶりの可愛くてひかえめな花だった 夏の池塘にはよく似合う あそこにも一輪 水中で多層的に開いた葉が池塘の質感を変える まるでヒツジグサのゼリー寄せだ 同行者は水羊羹と言った 水中のが水面まで伸びてくると 賑やかで楽しげだ 水面に絵ができていた

  • 尾瀬 ーヤマドリゼンマイー

    7月中ば 尾瀬の主役はこの羊歯だった ニッコウキスゲ、ヒツジグサ、コウホネ、トキソウ、ワタスゲ、アヤメ… 尾瀬ヶ原を演出する代表的な植物より 僕には存在感が強かった 水鏡に映る虚像がまた良し 先端部の柔らかい黄緑の輝き ピリッと張りのある立ち姿 心地よいフラクタルな図形の集合 群生ラインが作る湿原... 続きをみる

  • 尾瀬 ー木道ー

    燧ヶ岳への直線 至仏山への直線 竜宮への直線 木道は 在ることで湿原を絵画的に演出する 空間の奥行きと広がりが出て 空間がキリッとしまる 湿原の人為的な保護策が 視覚的喜びを与える空間に仕立ててくれている

  • 至仏山

    昨日午後の雷雨が湿原を洗い 今朝は空気が澄んだ 冷えた飽和状態の大気は霧をなし 湿原を這っていった 盆地を抜け遅れた塊が至仏山の麓で薄れてゆく 昨夜の予報に諦めていた至仏山へは 急遽身支度を整え直し宿を出た 昼前までが勝負と速足で臨む 森林限界を越えると尾瀬ヶ原の全貌が俯瞰出来た 若い緑の湿原に池... 続きをみる

  • 吹割の落水口

    滝は高みより落ちる典型的なのではなく 一枚岩を薄く流れる滑(なめ)滝がいい 群馬の代表2滝を見てきた 尾瀬の「平滑の滝」はこちらが高みから見下ろさねばならなかったが この「吹割の滝」は間際を歩いて遊覧できるものだった 醍醐味は巨大な排水口のような落ち口 上流から見ると遊覧者にヒヤリとする 「呑まれ... 続きをみる

  • 滑渓谷

    苦痛、悲嘆、受容、悟り 止まることのない水の流れは 火山灰で出来た岩を削り続け 噴出の時に封じた心を掘り出していた 幾百年、幾千年、幾万年 これからも流れ続ける水は その下に 何を掘り出すのであろうか

  • ハッチョウトンボ

    トンボは種を問わずなべて好きだ オニヤンマの巨体が悠々と縄張を巡回する姿は王の風格がある 戦闘機の如きギンヤンマの飛行と旋回も格好が良い 昔トンボ、ムギワラ、シオカラ コシビロ、チョウ、アキアカネ 羽黒に糸トンボ 大中小、形状、色それぞれに個性があり魅力がある 中でも、赤くて可愛い小粒な奴がいる ... 続きをみる

  • ハンミョウ

    子供のころから虫好きで親しんできた。 虫好きな子供にとっては定番のようにカブトムシやクワガタムシさらにはカミキリムシなどの甲虫は特に好きで飼育にも励んだ。 しかし、僕は青年になるまで小さなカミキリムシに似たハンミョウという虫を知らなかった。子供のころの遊び場であった野山にはいなかったかもしれないし... 続きをみる

  • 節理

    それは冷却の過程で生まれた 生命が感性というものを作り出す 遥かに遠い昔 やがて生まれる生理に 心地よさと潔さを与える秩序を形作った 秩序は想像を絶する圧力にも屈することはく 褶曲や湾曲のなかにもそれは保たれる 力強く、逞しく、そして粘り強い 節理は自然界の美しい規律であり精神だ 人間界では摂理を... 続きをみる

  • メビウスの山

    沢筋から尾根の中腹を巻き 樹林に囲まれた小さな台地に出た 眼前に現れた伝説の鋭鋒に色はなかった あの山の頂上にはいまだに誰も登った者はいない 頂上には山腹を巻いて登るルートが4つ しかし どれを選んでも頂上にはたどり着かない いずれも山腹を螺旋に巻き 険しい岩稜を攀じ登らねばならない そして 一周... 続きをみる

  • ジャンダルム

    憧れの岩稜 切れ落ちたその北面の突端に立つ 足元の岩から身体が離れていく感覚を覚える これほどまでに 切れ落ちた頂に立ったことはない これほどまでに 深い谷を見下ろしたこともない ほんの少し身を前に傾ければ 飛んでいけそうな気さえしてくる

  • 穂高

    中の湯に止めたバイクの荷台から ザックを外すと釜トンネルの手前からバスに乗り込んだ 8月の晴れた日だった しかし徳沢のテント場まででもザックの肩紐が肩にくい込んで辛かった 無知だった 3〜4人用のテント、ガスコンロにランタン、パックの白ライス3日分、レトルトカレー、ラーメンなど 重量こそ測ってない... 続きをみる

  • 賤ヶ岳

    琵琶湖北部の知名度のある山である その昔、豊臣勢と柴田勢が合戦を繰り広げた山 南は山本山から縦走して、北は余呉湖から登る 直下の麓から登るルートやリフトも有るがそれは使わない 南ルートは尾根筋に何基もある古墳群 北ルートは古戦場の尾根をのんびり歩くのが良い 冬の積雪期がなおのこと良い 切り開かれた... 続きをみる

  • 焼かれる雪面

    登山道はまだ雪の下 斜面はかなりの勾配だった 滑り落ちると雪渓の縁を越え がれ場の石にすりおろされるのは間違いない アイゼンを持っていなかったので 雪渓幅全部を使ってジグザクに攻略したのは正解だった 対面の縁にたどり着いて振り返ると 雪渓一面のクレーターが朝陽にジリジリと焼かれていた

  • スノーブリッジ

    沢に降りる石畳みの道の先はスノーブリッジのトンネルになっていた トンネル内の暗闇を屈んで覗き込み 身を反り起こすと 夕照の立山がまるで映写機で映されたかのように ブルースクリーンに映えていた

  • 大日岳のシロクマ

    7月2日、下界は40度の猛暑。 奥大日岳に続く稜線の雪庇は大きくひび割れクレバスを作っていた 末端に何やら白熊のようなものがじんわり溶けていた 動物園なら氷のプレゼント しかし、このクマは汗をかきながら自身が溶けねばならない 雫すべてが深い谷に流れ落ちるには さして日時はかかるまい 朝日に光る白熊... 続きをみる

  • Here comes the sun

    稜線の北斜面はコバイケイソウの群落地だった 多雪であった今冬の雪稜も融雪が進み あちこちに株が点在する 雪溶けが遅い窪地にクレヨンのような若芽が まるでついさっき出たばかりのようにニョッキリと立っていた 東の立山連山の稜線から出たばかりの光を受け 頭部は可愛らしいとんがり帽子 みんな喜んでいるよう... 続きをみる

  • クマ

    5月中旬、残雪期の白山に登った帰り、白峰村から勝山に超える峠手前の車道で熊を見た。 峠に向けて車で登っていると路肩に止めた軽自動車のおじさんが僕の車を呼び止めるので何事かと車を停めてみると熊が道路を横断したのだと言う。 おじさんは後続車をわざわざ止めることまでするなど、興奮状態だったようだ。 
車... 続きをみる

  • 鳥の言葉

    鳥の鳴き声は実に様々だ。鳥種によって全く違うのも改めて考えると面白い。 ホーホケキョ、トッキョキョカキョク、カッコウ、ツツピー、ギョギョシギョギョシギョジギョジ、ヒンカラカラカー 他にも文字で表すには難しいものがたくさんある。 個性的なものの中には品が良いとは言えないものやうるさいとまで感じるよう... 続きをみる

  • 森のスティーブ・ガッド

                ※以前撮っていたコゲラの画像が行方不明故、これにて失礼 

山道の谷筋から支尾根を登っていると頭上から乾いた連続音が聞こえてきた。 耳を澄まして音の出どころを探してみると、すぐ左に生えているリョウブの上方の枝に、頭をせわしなく左右に振りながらドラミングしているコゲラを認めた... 続きをみる

  • せみ

    こそばゆいよ さっきから俺の顔に 止まってる奴がいるんだが 正体がわからない どお~れ ああ、これが限界だ まだ見えない

  • タマムシ

    

数年前の8月だった、散歩でよく出かけていた自然公園の欅の下で数枚のタマムシの羽根を見つけた。メタリックな光沢の羽は下草の隙間で光っていた。 羽根は全体的には緑色だが黒や黄などが混ざるもので見る角度を変えるとブルーになる。玉虫色と言うだけにその色彩はなんとも曖昧でハッキリと断定できない。 物事の... 続きをみる

  • ブロッケン

    妖怪なんぞと 誰が言ったのか あれはまぎれもない通路だ もう一つの世界への それは 高山の限られた条件でないと開かない 量子力学だか、反物質だか 仕組みの理屈を聞いたからと言って どうだというのだ そんなことより 入ってみればわかるというもの そこに入り口が開いているのだから 俺は行くよ あっちの... 続きをみる