立石山
行く先は 朝霧の中
樹間より差し込む光の筋の中で
白霧が揺らいでいる
濃霧の林道はどこに通じているのだろうか
ひんやりとした空気の中、歩を進めると
ふと午前か午後かも不確かとなり
自身の見当識が失われていることに狼狽えてしまった
谷を遡り尾根に出る頃
霧は朝日の温もりの中に消えてゆき
うっすらと透けゆく白霧の向こうのいつもの景観に安堵する
深い谷にかかる橋の上
上流の山に薄青い霧が木々の上に残り
かつて大陸で見たユーカリの青い森を想起した
あれもまもなく霧散するのだろう
森の道、両側の木々の緑は濃く足元には一面の苔
梅雨の恵みをたっぷりと受けた緑は瑞々しい
ここは四方を緑に塗り込められた異世界
そんな錯覚の中にいた
異世界を抜け、細くザレた尾根を過ぎる
青霧があったあたりに来るとすでに澄んだ緑が広がっていた
山頂の空は明るく広く青い
奥空に向け幾筋ものジェット雲を望んだ
キリッとした白線を上空の風がほどいてゆき
次第に空に揺蕩い解けていった
上空の「時」はきっとここより速いのだ
そんな妄想を抱きながら頂を後にした
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