hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

2023年1月のブログ記事

  • 鏡山

    草木が霜で薄白い朝、鏡山の麓を歩いた 霜柱を踏む足裏が心地よい 沢沿いの池は凪ぎ 薄氷が張る池面を瑠璃色の光が切り裂いた 高速の光は枯れた池畔の葦の中に消えていった 宝石のようなカワセミの滑空は 落葉の林と枯れ葦の色の中 異次元から現れたかのようだった 新羅からの渡来人の鏡に由来を持つ山 かつては... 続きをみる

  • 甲山(かぶとやま)

    切り開かれた山頂の切り株に腰掛け 青い細帯の琵琶湖と比叡山を眺めている 暖かな陽は地面を照らし足元から我が身を温め 私は眠気と戦いながら上着を一枚脱いだ 冬は去ってはいない ただ、見渡す世界は霞で覆われ つかぬ間の陽気は里山の季節と時を惑わす 私はいつの間にかまどろみ、空想の中にいた かつて秋晴れ... 続きをみる

  • 城山

    山頂は小春日和の陽光に包まれ我が背をあたためる 切り開かれた先には伊吹山と霊仙山が夫婦のように並び 見事なまでに輝く白さで薄霞の上に浮いていた 前景にある杉のてっぺんにメジロが2羽 交互に幾度も飛びたっては戻る行為を繰り返す 意味や目的はわからないものの楽しそうである 私もメジロも突然の春が嬉しか... 続きをみる

  • 雪坊主

    雪の森中で出会う雪坊主 淋しげにこちらを見ている 何か訴えているようで無さそうで こちらも愉快で切なく複雑な心中に戸惑う 雪の森中を歩いているといろんな坊主に出会うのですが その度に目と耳を奪われるのです

  • 燕岳

    迎える朝日は奇岩をオレンジに照らし 頬刺す冷気の中それは暖かだった 遠望するアルプスの山々は薄白の肌を輝かせ 寒々しい頂群も温められていた 花崗岩の巨岩の大きな壁に陽光が当たり 私の幻影が映し出されていた 私は手を振ってみた 呼応するようにそれは手を振った 影の動作は妙に嬉しそうだった 丸い奇岩が... 続きをみる

  • 乗鞍岳

    位が原までくると息切れが強くなった 1から50カウント そして1から10カウントへ 肩の小屋に向けて スキー板をスライドする動作の連続は 登るにつれ途切れ途切れとなる 胸の鼓動が上着を揺らすとまで言えば大袈裟か 立ち止まる度前屈みで数回喘ぎ そして大きく長い息を吐く 反動で吸い込む空気にようやくま... 続きをみる

  • 北横岳

    溶岩が作ったという台地の上には 分厚い黒い雲が垂れていた 大きな霜がびっしりと張り付いた凍てた岩の上に立つと 雲に手が届きそうだった 岩を降りた私は 大地と黒雲の天井の狭い隙間を横岳に向かって歩を進めた ところどころにある登山道両側の岩には 渦を巻くようにエビの尻尾が張り付き コーティングされた道... 続きをみる

  • 山の人

    東北のとある谷深い山 初めて出会った人と山を歩いた 地下たびに倒木にテープを巻いた杖を持ち 立ち姿が真っ直ぐでキリッとしていた 痩せた身体にこけた頬 不安の一抹も感じさせない表情に深い皺が刻まれている 林道をしばし登る 淡々と歩くその動作に無駄は一切ない 沢を下る 頭の位置、上体の揺れがない美しさ... 続きをみる

  • 大雪山麓の森で

    林の手前の川べりで 吹雪に出会った 雪の一片を手にとると 綿毛をつけた虫だった この地に居住経験を持つ人が言った 「もうすぐ雪が降るよ」 虫の名は「雪虫」だと言った 黄金のカラ松の林の中に入った そよっと風が吹き 小さく細い葉が雪の如く林内を舞う 私は降り落ちる葉を首をすくめて眺めていた 今日出会... 続きをみる