hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

山の人


東北のとある谷深い山
初めて出会った人と山を歩いた


地下たびに倒木にテープを巻いた杖を持ち
立ち姿が真っ直ぐでキリッとしていた
痩せた身体にこけた頬
不安の一抹も感じさせない表情に深い皺が刻まれている


林道をしばし登る
淡々と歩くその動作に無駄は一切ない
沢を下る
頭の位置、上体の揺れがない美しさに見入った


沢の出合いで休憩
山の人はタバコを燻らせた
紫炎の香りに何故かホッとした私は歳を尋ねた
「77だ、あんたも同じくらいだろ?」
山の人は一回りも下の僕にそう言った
「わたしはまだ64ですよ」
沢の音に負けずに大きめの声で返した
「えっ、この頃は目も耳も悪くてな」
と、顔の皺を深めながら問い返す顔に今は亡き兄を見た