hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

ムカデの山(三上山)



広い平野に残る孤立丘とも呼ばれる小山
視認は近江の各地にとどまらず古都や摂津の山からも容易い


季節は夏、ある日の気まぐれな登山
三上山肩の東光寺に抜ける峠に出るとぐるりが展け
南に緑濃い左右対称の見事な三角錐が迫っていた
頂点の上には梅雨明けの抜けるような青空が深く
明確な色の世界がとても印象的で美しかった


北の古代峠を越え日陽山に着く
岩場に座り山を眺め直してみた
依然と美しく流れる斜面の大きな三角を見ていると
ふとこの山にまつわる伝説を思い出した


かつてこの山を七巻半も巻き付ける大ムカデがいた
琵琶湖を荒らすこのムカデ
俵藤太なる武人が幾里も離れた瀬田の唐橋から
弓矢を射て成敗したというもの
いつの間にか三角山にうっすらと巻きつくムカデが見えてきた


岩場を降りた私はこの山を一巻き歩いてみた
木々が覆う薄暗い中腹の水平道をぐるりと周歩
檜の大木の根を跨ぎ、雑木の木漏れ陽を踏み、ウラジロの群落を抜ける
一周に小一時間、七周半も廻るには陽のある時間を全て費やす必要がありそうだ


一巻き後に山頂を目指した
山頂に上がると陽はすでに高く
南の切り開きから瀬田方面は遥か
唐橋と思しきあたりを望むときらりと点光が煌めいた
藤太の放つ鏃(ヤジリ)からのものかななどという妄想が浮かんだ