hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

チョッキリ


8月の末から9月に入る頃、森の散歩道に木の葉付きのドングリが落ち始める。あるコナラの樹下の地面は、落とされた葉とドングリで敷き詰められている。それらは落葉ではなく木の病気によるものでもない、犯人はチョッキリだ。


チョッキリはゾウムシの仲間。僕が散歩する森で見かけるコナラの実を落とすチョッキリは灰色チョッキリというやつらしい。夏の終わりになるとコナラの実に卵を産み付け、実が付く枝の少し上を噛み切って落とす。落とされた実、ドングリの中でチョッキリの卵は孵り幼虫となってドングリの実を食べて大きくなる。



落とされたドングリを注意深く観察すると傘の上から実に貫通するかすかな穴が認められる。卵を産み付けた跡である。彼女たちのこの子孫を残す戦略には感心せざるを得ない。


木の実に卵を産み付ける虫は他にもたくさんある。山で拾う栗にも虫の幼虫がよく入っているものである。しかし、それらの実は自然に落ちてきたものであって、虫が落としたものではない。チョッキリは目的をもって意図的に落とす。それもそこにひと工夫がされていてとても小さな虫の仕業とは思えないところがある。実だけを切って落とすのではなく実の上にある数枚の葉を残して一緒に落とす。実と葉の少し上を齧るのだ。


何故葉を付けて一緒に落とすのかを推測するに、これには落ちた後の実を雨風から守ったり幼虫の後の食料にするという意味合いがあるのかと考えたり、さらにはドングリが落ちる時の衝撃を緩和する意図があるのかなと思ったりもする。
ドングリに着いた2~3葉はパラシュートになってゆっくりと落ち、地面に落ちる衝撃を緩和する。卵に衝撃を与えない。


後者の理由があるとするなら、高い知的能力に裏打ちされた行動だということができる。チョッキリに近い仲間のオトシブミなども、職人的な技で巧妙に巻いた葉に卵を産み付けその葉を落とすが落ちる時の衝撃のことまでは考慮されているのかどうか? 


葉っぱと実の違いはあるが、ドングリの重みを計算したチョッキリのこの知恵には舌をまく。