カール
削ぎ取られた礫が流れる大斜面
中央の凹部に雪渓が流れ
流れを挟んでオレンジと濃赤の帯が沿う
広大な箕のような地形の底で見上げる秋は
絶妙の配置とコントラストの芸術劇場となる
赤が映える
黄が映える
緑が映える
色映えの下地は灰色の濃淡
配置の妙は岩が成し
圏谷の主役は岩であった
モレーンの積み岩
礫上の迷子石
岩塊を越え秋に染まる斜面をトラバース
大岩の背後に鋭鋒が聳え立ち
日の当たる先端は空に投射された映像のようだった
氷河が置き忘れは庭園の置き石
自然の配置には意思が視える
はずれの岩上に立ち、時を忘れ眺めた
美の感覚、美の認識というものの源は何だろうか
自然は原理を理解するだろうか
自然自体が原理なのか
岩峰のてっぺんで見下ろす圏谷は遥か下方の遠い世界
全容を視界におさめ、高度感に酔う
山盛りアイスをスプーンでこそぎ取った跡は心地いカーブを描き
小屋たちがアクセントをなす箱庭を作る
底から噴き上がる風を受け舞い降りてみようか
カールの俯瞰はそんな大それた衝動を起こさせる
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