hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

カール


削ぎ取られた礫が流れる大斜面
中央の凹部に雪渓が流れ
流れを挟んでオレンジと濃赤の帯が沿う
広大な箕のような地形の底で見上げる秋は
絶妙の配置とコントラストの芸術劇場となる


赤が映える
黄が映える
緑が映える
色映えの下地は灰色の濃淡
配置の妙は岩が成し
圏谷の主役は岩であった


モレーンの積み岩
礫上の迷子石
岩塊を越え秋に染まる斜面をトラバース
大岩の背後に鋭鋒が聳え立ち
日の当たる先端は空に投射された映像のようだった


氷河が置き忘れは庭園の置き石
自然の配置には意思が視える
はずれの岩上に立ち、時を忘れ眺めた
美の感覚、美の認識というものの源は何だろうか
自然は原理を理解するだろうか
自然自体が原理なのか


岩峰のてっぺんで見下ろす圏谷は遥か下方の遠い世界
全容を視界におさめ、高度感に酔う
山盛りアイスをスプーンでこそぎ取った跡は心地いカーブを描き
小屋たちがアクセントをなす箱庭を作る
底から噴き上がる風を受け舞い降りてみようか
カールの俯瞰はそんな大それた衝動を起こさせる