hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

雲海の山


夜明け前の無風に揺蕩い静かに下界を覆う
青く薄暗い視界に雲の海は谷を埋めていた


朝日がその高みを増すと蠢き始める白雲の群れ
斜面を舐め上がるそれはやがて岩塔を飲み込み
沸々と尾根に湧き上がる


私は足元を脅かす雲を眺めながら行く先の細尾根を眺めた
雲の先陣は西風に煽られ上空に巻き上がると
恨めしそうに霧散し消えた
尾根の行くてを視界に認め、安堵が身体をほぐす


雲の容態が刻々と変化する早朝の縦走
期待と怖れの混じった感情を抱きながら尾根を渡った
途中のピークに立った午前の終わり
いつの間にかあたりの雲海は消え
谷底には川べりに点在する街と田畑が見おろせた
雲の下の実在は心中の相反する感情をより絡ませたようだった