hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

滑沢



道は花崗岩の沢を縫うように渡る
岩盤の表面を洗う流れは盤上を滑らかに研ぎ
曲線美が心地よいU字の水路を穿つ
流れの時はゆっくりゆったり
のどかに音楽を奏でていた


いつの間にか気づいた
急く気持ちも気負いも消えていることに
滑沢は私の中の起伏をも研いでいたようだ
ゆっくり歩けば良い
流れを楽しみながら


U字の水路はS字を描き突然途絶える
向こうには中空があるばかり
落ち口は異なる時世界への入り口だった


時が溢れる流れの出口は唐突で
吹き出す水の流れはラップのリズムのように一瞬を連射する
落ちる水は少しづつ時を減速し
一瞬一瞬の玉に砕け散る


緩やかであり急激である滑沢の時の流れ
緩急と転調の沢歩きは尾根の手前で終えた
この先は山頂までの尾根道をひたすら登るのみ
私は時を巻き足取り軽やかに頂の大岩を目指した