hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

古代峠



遊歩道から山道に入り、古代峠と名付けられた鞍部に出た。正面には両側から流れる山裾が一重の広い襟を合わせている。手前に近江南部の平野、そして霞がかかった琵琶湖の帯の背後には比叡山の屏風が立つ。眼前に広がる逆三角形の織物の真ん中を登りの新幹線が裁断するように通り過ぎていった。


峠には石門がある。両側の石積みの上には畳3畳分はある岩が乗せられている。見るからに人工的な石積みで、痩せた尾根筋だけにその技法に感心させられる。ここに来るといつも門をくぐり、その後に天石の上に立つ。眺めがよいからというのも理由だが、この石積みの造りが僕の行為を誘発するからという方がほんとの理由のような気がする。それにしてもこの石積みは何なのだろう。


近江の地域は古墳が多い。このあたりにもいくつかが散在する。この峠から谷をはさんだ山腹にも一基ある。きれいな長方形に囲われたもので平たく切られた四角の石蓋がされている。石棺だったのだろう。


 攀じ登った天石の上から平野の眺めがよいということは、平野からもこの古墳が見えるということだ。この山の隣には旗振り山という名の山がある。穀倉地であるこの地域には、大阪の堂島でやり取りされる米相場を伝える旗を使った通信網が湖北にまで作られていたそうな。江戸から大正の初期まで機能していたその通信は、大阪からわずか10分程度で伝わっていたというから驚きだ。この石門ももしや何らかの通信用の中継所だったのだろうか。


 天石の中央部に「山」の刻字。人が立つ位置からは逆さに彫られている。見上げた先の近江の富士「三上山」山頂から読むべき向きだ。


石門の謎はさらに深まる。