hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

顔紋様



サルがいる
ナマケモノがいる
フクロウにカラス
それにETも


薄暗い木陰で出会った倒木に
思わず後ずさり
頭の中に浮かんだ「怨念」は
1つ1つ像を結び
そして生き物になる


群化の法則というものがある
目の前の世界にそれはない
時をおいても
集まる渦にまとまる世界は生じない


私たちには
見たいものを見たいように見ようとする習性がある
事物の見方には個性や癖もある
全体を捉えた後の生き物の出現は
安心を導くための
無意識の心の働きだろうか

コーティング


これは単なる霧氷ではない
タテガミはない
特殊な技術で
昨夜のうちに仕込んでおいたのだ


地面の笹はそのままに
立木だけコーティングするのは
私の専売特許
ただ、舐めたって甘くはない


うまい具合に空も濃くなってくれたから
化粧が映える


何の目的でと聞かれても困るんだが
遊んでみただけと言ってもいい
無駄なことといえばそれまで
だけど、登山者たちは喜んでいたんだから
それでいい

鼻岩


嗅覚は古くからの感覚である
視覚や聴覚よりも先輩だ
嗅球の受容体は神経そのもので
信号は中継を経ずに脳部位に伝わる
好意、愛情、攻撃、忌避
記憶と情動は刺激され
感情と行動を起こさせる


マグマの噴出はこの地に渓谷を作った
1000万年以上も前のこと
ひたすら水と木々と苔の匂いを嗅いできた
無表情で無機的な特殊感覚器官
感情は抱くのだろうか
記憶は蘇るのだろうか


私は気付く、私が写真を撮った理由に
印を押したような無機質で生気のない伏し目顔
不安、絶望、諦め、死
あの人のあの絵
色調こそ違えど
香月泰男のシベリアの世界
酷寒の暗い大地は
どんな匂いがしたのだろう

つられ笑い


滝をもっと上から見てやろうと
対面の急な斜面を這い上がった
斜面上部で振り返った時
思わず笑みがこぼれてしまった
人間にはミラーニューロンシステムというものが備わっているらしい
他人の表情や動作を見ると
自分の脳の中でも同じことをするように
神経が働いているのだそうだ
思わず同じ表情をしたり
真似をしてしまうのは
このシステムの仕業らしい
ぼくはこの時思った
対象が岩のほほえみでも
このシステムは働くんだと

ラムネ菓子



花崗岩の一枚岩を流れ落ちる滝の右岸を高巻き
真砂が埋める平地を流れる川端に立つ
先ほどから耳に入る口笛のような風音が
大きく聞こえるようになった
開けた滝の上で流れ吹く風の中
意識を集中させ
強弱に波打つ音の方向に視線を向けた時
小さな緑の円孔が視界に入った
音源だろうか
まるでラムネ菓子を咥えて
笛を鳴らして遊ぶ口ではないか
まさか?
再び、目と耳の方向を合わせ直してみた
音は確かにそれから聞こえてくるのであった


自然の造形遊びに出会うには
視聴覚の感度を高めていないとダメだ
方法は簡単
山を歩くこと
出来れば独りで