山は城で城は山
観音寺城は山の上、最古の山城だと言う
雑木の中の急登を大石垣に向かう
木漏れ日にシマヘビが体を温め
幾つかの朽ちた切り株からシロアリが飛翔
上空では燕が群れ舞っていた
東の箕作山との間は枡目の田畑
麦畑は濃い緑の敷物で
水張りの田は空を写す水鏡となる
両者の対比が初夏の平野にアートを描いていた
道端にニガナの黄とカンアオイの緑
門前のモミジの青葉にピンクの羽根
本城跡には藤の花が散らされ
城主の出迎えの心尽くしが嬉しかった
山頂の南北の木立に僅かな窓
北正面に伊吹山
南正面に三上山
ともに近江を代表する三角錐の独立峰が
真ん中の此処を挟んで見合っている
私は二点を結ぶ直線の中心に立った
西には水張りの干拓田と内湖が広がる
最も水位の高いこの時期
その向こうの琵琶湖との境界が曖昧で
一帯は広大な湿地となり
城があった頃の景観を見たような気がした
展望の大石垣を後に下山
見下ろす田に耕運機が一機ゆっくりと這っていた
もう鏡に空は無く濁った茶色が揺れていた
泥田が緑に変わり麦畑が黄金に波打つ頃また訪れてみようと思った