hiroshi63のブログ

山と妄想あそび

モッタ温泉


島牧村は海岸線の崖の薄い縁にある小さな村
その外れの漁港近くにモッタ温泉はある
一軒宿である
小さめの浴槽ながらラジウムを含む泉質が良く
ぬるめの露天で1時間以上も浸かって海を眺めた


裏山の海岸線に並行する崖の上で地質調査を手伝った
40分程崖を巻く山道を登り調査にかかる
比較的平坦な崖上には石垣の縁で区切られた遺跡のような段々畑の跡があった
昔の人はこんな崖上で農作物を作っていたということだ
海岸線の薄い平地には居住家屋をたてるだけで農地の分がなかったからであろうか
それにしても40分かけて登る畑作りと作物作りはかなりの継続的な労力が必要な作業であったに違いない
それを思うと昔の入植者の苦労と辛抱がこの崖上の畑あとから滲み出るようだ
ただ、所々に樹間から見通せる日本海の広がりは労を癒やしたに違いないとも感じた


温泉宿の経営者はそうした人たちの末裔なのだろうか
一所懸命の人たちがまだこの地で生活を営み温泉を守っている
露天の湯で漁の話をする人たちと一緒に浸かりながら
そんなことを考えていた

八幡山


八幡山


二の丸
登山道はふかふかの落ち葉道
神社の裏手を尾根まで登ると小楢の大木が待っていた
木々の間は明るく気持ち良い尾根道が続く
苔むした石垣の立ち上がり
一輪のショウジョウバカマが木漏れ日に首を伸ばし
冬の終わりを宣言していた
瑞龍寺境内の切り開きに立つと一気に世界は広がり
下界を眺める心内に城主秀次の心境が想像される


北の丸
枯れ茶色の葦原に縁取られ
湿地を思わせる穏やかな西の湖
その向こうに霞んだ霊仙山が浮く
麓の満開桜の賑わいをよそに
山頂の此処は静かな春が流れている


東に青霞む大きな屏風の比良連山
整然と区分りされた田畑に麦の緑が鮮やかだ
その二つの帯で挟むように
雨の濁りに湖岸が縁取られた琵琶湖があった
最上段の比良が一番手前にせり出している
長命寺山とこの山の森に挟まれた狭い景観は
見事に遠近を逆転させていた


西の丸
開けた視野は本来の遠近を取り戻し
いつものパノラマに目の違和感はない
南の湖に二重に平地が突出させるは河川の力
孤立丘が一つ先端にきれいな編笠をかぶせている
湖は後方に霞む編笠の比叡山の長い裾野の端まで続き
平野はまことに広い
湖面に立つ白波とウインドサーフィンの疾走に風が見えた


出丸
城跡の石垣は野面積み
真ん中にヤマザクラの大木が張り付くように生える
根は石垣の隙間を這い潜り
古く不安定な石垣を編み込んでいた


平野は蒲生野まで続く
甲賀に続く水平は深く遥かに鈴鹿山地の南端を望む
東の正面には対になった孤立丘
その真ん中に綿向山が鎮座する


格子に整えられた町の塊が平らな地に貼り付き
田畑も街も直線で整然と区画分けされた平野を
区画に沿ってまっすぐに新幹線が横切っていった
それは静止した空間に時間を引いているかのようだった

竜ヶ岳


積雪の後をねらい峠を目指した
雪の国道をひたすた登る
遡るにつれ谷は深く、流れる水は深く碧い
雪で閉ざされた道に人気はなく鹿の足跡が寂しい


国境の峠にスキーをデポしつぼ足で山頂を目指した
雪の急登は消耗した体力を容赦なく奪い取る
だが、頂まで意欲は削げることはなかった
白く丸い山頂にただ一人、美しい場所だった


こんな山を何度やったことだろう
鈴鹿の県境の山はどこも奥深い
とりつきの峠まで雪の積もった車道は何キロも続き
峠からのラッセルに汗が噴き出す
それでもそこに向かわせる欲求は何だったのだろう
今もよくわからないままでいる

バームクーヘン(伊豆大島の大地層断面)


私は今「時間」を見ている
目を見張るこの断面
一層が150年から200年と言う
眼前にはいったい何年分の時が積まれているのだろう


各層の堆積は火山の噴火によるもの
褶曲によるものではないとのこと
見る部分、角度によって印象が変わる
正面に立つと樹木の年輪や愛称どおりバームクーヘンを思い起こす
端から見通すと波打つ曲線のうねりは生き物のように動的だ


それにしてもこの「時」の重ねは美しい


三原山



黒磯と黒砂の浜、そして黒い砂漠
地下深くからの噴出物が作った黒の世界
マグマは斜面を流れ下り黒磯と浜を作る
山上ではカルデラを埋め我が国唯一の砂漠を作った


炭のような黒磯の波打ち際
おろし金のような鋭利な岩の刃先が流木を擦りおろしていた
痛みが身体を走り背が震えた


黒砂の浜の波打ち際
寄せ引く波が描く幾重もの波紋があった
波が足を洗うのを忘れ見入ってしまった


「荒・穏」の対比がよくマッチした磯と浜
ともに光沢ない黒い世界が広がっていた


真っ黒なゴジラの体があちこちに立つ
ジオロックガーデンは彫像広場だ
朝日に光るススキの向こうに巨体がひとつ
荒涼とした台地を去る後ろ姿に哀愁がにじんでいた


流れる砂漠の黒砂を踏みしめながら黒い展望山に登った
一望する砂漠は黒く、点在する草株が黄金に光っている
砂漠の向こうの海がいっそう輝いて見えた
展望山から砂漠に降りた私は火口丘を目指し登山道を登り返す
あたりはまだ黒い世界が続いていた