hiroshi63のブログ

山と妄想あそび


僕は中学生の時
冬の寒い校舎の外で1時間も立たされたことがある
始業時間に教室に戻っていなかったというだけで
3人か4人一列に並んでいたな
そう、ちょうどこんな具合に


バカを抜かすな
校舎の外とここを一緒にするんじゃない
それに、俺たちは一晩以上だ
見てみろこの身体がその証だ


いや失礼
ところで、これは何かの罰なのかい


これを罰だとみるのか
感性が軽薄な生き物なんだな
人間の登山者というものは
そんなもので山に登って
何を得るっていうのかね
ましてやこんな厳寒の山に


それでは修行のようなもの?


そう理解してもらっても良いかな


それなら、僕たちの登山っていう行為も
「行(ぎょう)」だとも言えるんだけどね


ほお、「行」ね
「業(ごう)」の方じゃないのかね

地球の色



こんな日に山に登れる幸せを噛みしめる
マイナス15度、凛とした空気の中
遠くから乾いた破裂音
極寒に幹が耐えられなかったのだろう
残酷な現象だが
林間を抜ける音は耳と皮膚に心地よい


樹上を見上げてみる
木は見上げる姿が良いと言うが
納得いく生命性と美がある
出来過ぎをも感じさせる光景は
誰かが仕組んだ演出のようだ


霧氷が化粧した檻の外には
青い宇宙が深く
頭上はまさに地球の色
そして僕は
いつの間にか囚われ者となっていた

立ち行


強風と正面きって対するには
肩幅より少し広く踏ん張り
腰を落としやや前傾姿勢を保つ
これが重要な構えだ


なに?
ピッケルは持たないのかって
この姿を見てもそんな物が必要だと思うのか
お前も一度道具に頼らず
己が身だけで受け止めてみると良い
尾根を越える風を


樹木の繁茂が少ないこの尾根では
北西からの風が厳しく撫で続ける
風に潜む霧の礫は
私の身体をゆっくりと飾り付け
ひと夜を耐え抜いた私に名誉を与える


どうだ
この威厳に満ちた立ち姿
ひ弱なお前にはできないだろうな

失色



色の知覚には網膜にある3種類の錐体細胞と
側頭葉にあるV4領域の機能が必要だ
どちらかが不全だと
知覚できる世界は白黒のものとなる


溶岩台地に吹き付ける風は容赦がない
列島に寒気が南下し
低気圧が北日本を通過する
北アルプスに多量に雪を落とした後の
身を切る寒風が諏訪を吹き抜ける


この日、黒雲が空を埋めると
雲下の台地は色を失った
サンゴの寄せ植えが広がる
辺り一帯は白黒写真の世界
温覚を痛覚が凌駕する空気の中
色覚を失う錯覚が加わり
目の前の世界から現実があやうくなる
見回すと左右にも後ろにも色はなかった
知覚の機能不全を疑いながらも
なんだか隣の世界に入ってしまったようだった

モノリス


神の居どころに由来するこの地の巨石


広大な大地に作られた環状の神座「カルデラ」


1400万年も前の建造にもかかわらず


その座の背もたれは時の流れに抗い


この荘厳なる形を保ち続ける


それは


今もなお座を守り続ける犬の


熱き忠誠心の賜物なのであろう